2019年上半期に読んだ小説

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どうもこんにちは、ちはるです。

時が経つのは早いもので、2019年もすでに半分が終わろうとしていますね。
恐ろしい。
今回は2019年上半期に読んだ小説について、読了順に振り返ってみようかなぁと思います。

そんでもって、今回は作品ごとにおもしろ度おすすめ度なる誰得ポイントを付けてみようかなと思います。

あくまでちはるの超個人的な主観に基づくポイントの評価基準はこんな感じ↓

おもしろ度 おすすめ度
0コ これはひどい。 知人が読もうとしてたら
思わず忠告しかねないレベル。
1コ 正直つらい。眠気を誘う。 読書は本人の自由なので
止めはしないレベル。
2コ つまらなくはない。 素直におすすめできるレベル。
3コ 普通に読める面白さ。 面白い?と訊かれたら素直に頷くレベル。
4コ かなり面白い。アタリ作品。 友人との話題にわざわざ
あげるかもしれないレベル。
5コ 最高。好き。 布教するレベル。

ではでは、いってみましょう!

ヴァイオレット・エヴァーガーデン   –  暁佳奈

おもしろ度:★★★★ おすすめ度:★★★+0.5

まず一冊目、というか一作目。
こちらは上・下巻+短編集まとめての紹介です。

自動手記人形オート・メモリーズ・ドール

その名が騒がれたのはもう随分前のこと。
オーランド博士が肉声の言葉を書き記す機械を作った。
当初は愛する妻のためだけに作られた機械だったが、いつしか世界に普及し、それを貸し出し提供する機関も出来た。

「お客様がお望みならどこでも駆け付けます。自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァ―ガーデンです」

物語から飛び出してきたような格好の金髪碧眼の女は無機質な美しさのまま玲瓏な声でそう言った。

ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン公式HPより)

第五回京都アニメーション大賞にて、同賞初となる大賞受賞作となった作品。

この小説はとても叙述的な文章で綴られています。
そして僕はそういう文章が結構好きだったりする。
なのでこの作品は結構刺さりました。

作中で語られるのは様々な形の「愛」「手紙」

感情が極めて希薄で、孤児で、記憶喪失で、恐ろしいくらい命令に忠実で、故に作中で過去に起こった戦争では殺しの「道具」として扱われて……、と何も持ちえなかった主人公ヴァイオレット・エヴァーガーデン
そんな彼女は自動手記人形という職業を通し多くの人々と交流していくなかでたくさんの「愛してる」を学び、その想いが綴られた「手紙」を誰かへ届ける。
そうすることで、彼女は自分にとっての「愛してる」を知ってゆき、それを届けたい人の姿を探して足掻くように成長していく。

その様はなかなか読み応えがありました。

というか、何かと切なかったり遣る瀬無かったりして、けれど最後にはどこか心温まるストーリーが、芳香溢れんばかりの表現と相まって涙腺をせめてくる。
ヴァイオレットをはじめとした登場人物達の生き様や「愛」が、いじらしいと言うおうか何と言おうか、読んでいると胸が締め付けられずにはいられない、そんな作品です。


この作品を読む上で少しハードルを上げているのは、同作を出版するKAエスマ文庫の取り扱い書店が限られていると言う点かと思います。
僕も最初調べたとき、「えー」ってなりました笑
いちおうAmzonでも扱ってるようですが……、出品元に若干の不安を感じるのも事実。

なので、正規取扱店で買うか、京都アニメーションのオリジナルショップで通販するのが吉でしょう。
京アニショップ
取り扱い店舗情報

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それにしたって、ヴァイオレットの人間離れした(原作風に言うなら人形じみた)美しさの描写なんかでは思わず笑っちゃうくらい大仰になる本作の描写は、なんだかいちいち心地いい。

 ヴァイオレット・エヴァ―ガーデンという女はまさに人形の如く美しく静かな佇まいをしていた。金糸の睫毛に覆われた青い瞳は海の底の輝き、乳白色の肌に浮かぶ桜色の頬、艶やかにルージュがひかれた唇。
どこをとっても欠けることのない、満月のような美を持つ女。

(ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン上巻より)

何だその体言止めは!けしからん!(賞賛)

僕の中で一番印象深いのは、上巻最初のエピソード「小説家と自動手記人形」
やー、アレを読まされたら、そのあとも読み進めちゃうでしょ。

それと、「少女と自動手記人形」も結構好きでした。

何というか、時間とか、死とか、そういう覆しがたい物による人と人の断絶と、それでも続いていく愛情は胸に迫るものがあります。
僕はああいうの弱いんだ……。

また、ヴァイオレットがただただ美しい女性として描かれているのみだったら、胸やけを起こしていたかもしれないけれど、感情が希薄であるが故にどこかすっ呆けた部分があったり、ちゃっかりクール脳筋だったりする部分が個人的には良かったのかもなと思います。

主人公以外の登場人物もくせ者揃いで、全体を通して綺麗で澄んだ物語ではあるのだけど、いい意味で作品に騒がしさを持たせている。

そう言った人間的騒がしさに揉まれたからこそ、ヴァイオレットの成長もあったのだと思うし、これかもまた成長していくんだろうなぁ。

屍人荘の殺人   –  今村昌弘

おもしろ度:★★★ おすすめ度:★★

神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、いわくつきの映画研究会の夏合宿に参加するため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメンバーたちと肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。
緊張と混乱の一夜が明け――。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった……!! 究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り、謎を解き明かせるか?! 奇想と本格が見事に融合する選考員大絶賛の第27回鮎川哲也賞受賞作。

東京創元社HPより)

第27回鮎川哲也賞受賞作。
作者デビュー作にして、

  • 『このミステリーがすごい!2018年版』第一位
  • 『週刊文春』ミステリーベスト第1位
  • 『2018本格ミステリ・ベスト10』第1位

と、何やらすごい作品らしいです(雑

友人に何やら意味深な笑みと共に渡されて読んだ今作、クローズド・サークルなミステリとなっています。

物語の舞台がクローズドな環境に至るまでの過程というか、ネタそのものは確かに斬新なのかもなぁ、と。

ただ、これを本格ミステリと言われると、「本格ミステリとは……?」という気持ちにならなくもないのですが、普段あまりミステリは読まない門外漢ゆえ、踏み込んだ話はしないほうが吉でしょうか笑

文章自体は読みやすく、話もつまらなくはないです。
あんまり期待値を上げすぎるのは良くないかもしれませんが笑
続編も出ているようですし、映画化もされるそうなので、気になる方はチェックしてみるのもアリかもしれませんね!

個人的感想はココをクリック

上でも書いた通り、非常に読みやすい文章だったなぁ、と思います。
ゾンビが大量に襲来して別荘が陸の孤島と化すというのも、まあ斬新かな?と。

でも、それにしたってこのミスやら何やらで第一位を取りまくってるという点には、何故この作品が?と思わざるを得ないと感じました。
まあ普段あまりミステリを読まないので何とも言い難いですが、恐らくこの作品よりハイクオリティの作品は他にもっとあったのではないかと。
(そもそも、このミスやら何やら、別に騒ぎ立てるほど権威?ある物とも思えないけど……ゲフンゲフン)

個人的に目についたのは、作中で登場する班目機関なる存在や、ゾンビ発生の引き金となった実行犯たちといった伏線の回収を投げっぱなしにしてる点。
続編があるということで、その辺りの伏線は続編で回収されるのでしょうが、それにしても雑だなぁ、と。

これは超個人的な憶測でしかありませんが、この辺りの設定や作中の描写は、続編・映画化のために、編集の命令によって後付けで挿入されたものなのかな、と思いました。
今作が作者のデビュー作という点からも考えると、普通、大賞応募作が、こんなに「続編へ続く!!!」な終わり方をするわけがないと思うんですよ。
いやまあ、そういう作品を応募する人はいるでしょうし、よほど面白ければそういった作品が賞を獲ることもあるんでしょうが、それほど光るものを、この作品からは感じられない……。
登場人物(特にヒロイン)の、俗にいう萌えに寄せたメディアワークス的キャラクタ描写も相まって、何となくこの作品からは「ライト読者層を狙って続編・映画化展開できるキャッチーな作品を作ろう!」という意図による「作られた人気」臭が漂うというか。

無論、全て僕の憶測ですよ? 単に僕が、そういう雰囲気感じ取ったというだけで、真相は全く違うかもしれません。
ごくごく普通に楽しめたという感想も、本当のことです。
デビュー作でこれだけ書くのは普通に凄いな、と。
だけど、そのうえで、何となく「う~ん……????」となってしまう、そんな作品だなぁと思いました。

Self-Reference ENGINE   –  円城塔

おもしろ度:★★★ おすすめ度:★★★

彼女のこめかみには弾丸が埋まっていて、我が家に伝わる箱は、どこかの方向に毎年一度だけ倒される。老教授の最終講義は鯰文書の謎を解き明かし、床下からは大量のフロイトが出現する。そして小さく白い可憐な靴下は異形の巨大石像へと挑みかかり、僕らは反乱を起こした時間のなか、あてのない冒険へと歩みを進める――軽々とジャンルを越境し続ける著者による驚異のデビュー作、2篇の増補を加えて待望の文庫化!

ハヤカワ・オンラインより)

SF小説を読む人なら誰もがその名前を知っているであろう、日本SF界の巨匠・円城塔のデビュー作。

蚊の鳴くような声で「SFが好きです」と言える程度にはSF小説を嗜む私がこの小説を買ったのは既に数年前(
当時はその内容と文章と、私自身の私生活の忙しさ云々によって読書中の睡魔に抗えず本棚の片隅におしやってしまった今作を、ようやく引っ張り出して読みました。

結論から言えば面白かった

上↑に引用したあらすじを読んで頂くと「何を言ってるのか分からない」となるかと思いますが、まあそうだと思います。
なんてったって床下からフロイトが出現しますからね。

けれど、実際に読んでみると「ははーん、なるほどね」となる(僕の読解力ではならない場合もありましたが笑)。
だから、「この小説はどんな本なの?」と訊かれても、その回答には非常に困る。
これはもう、読んでみないとわかりませんね。

扱われているテーマを挙げるとすれば、時空間や宇宙、人工知能、有限と無限と言ったところが主でしょうか。
これらのテーマについて学生時代に物理学を学んでいたという作者が、摩訶不思議な日本語によって物語を綴ったのが今作、というのがこの作品についての説明になるでしょうか。

科学的(広義の意味で)な要素が散りばめられた円城塔ワールドを味わってみたい!という方には、オススメな一冊です。 

個人的感想はコチラ

個人的に、作品全体に散見される「イチを無限で割り算するという意味でのゼロ」という考え方が、妙に好きでした。
あと、「巨大知性体群の期待を一身に背負って出撃する巨大亭八丁堀のお話」が読みたい。スゲー読みたい笑
他の円城塔作品にもちょっと興味が湧いたのですが、他作品は今作とはテイストが違うと言った話もチラホラ。
うーむ。

麒麟児   –  冲方丁

おもしろ度:★★★★ おすすめ度:★★★

慶応四年三月。鳥羽・伏見の戦いに勝利した官軍は、徳川慶喜追討令を受け、江戸に迫りつつあった。軍事取扱の勝海舟は、五万の大軍を率いる西郷隆盛との和議交渉に挑むための決死の策を練っていた。江戸の町を業火で包み、焼き尽くす「焦土戦術」を切り札として。
和議交渉を実現するため、勝は西郷への手紙を山岡鉄太郎と益満休之助に託す。二人は敵中を突破し西郷に面会し、非戦の条件を持ち帰った。だが徳川方の結論は、降伏条件を「何一つ受け入れない」というものだった。
三月十四日、運命の日、死を覚悟して西郷と対峙する勝。命がけの「秘策」は発動するのか――。
幕末最大の転換点、「江戸無血開城」。命を賭して成し遂げた二人の“麒麟児”の覚悟と決断を描く、著者渾身の歴史長編。

KADOKAWA公式HPより)

今年1月に小説『十二人の死にたい子どもたち』の映画化もされた作家・冲方丁の歴史小説です。

内容は幕末に生きた麒麟児、勝海舟を主人公とした江戸城無血開城のエピソードについて描かれたものとなっています。
無血開城のエピソードと言うからには、今作の見所は将軍の命を受けた勝海舟と官軍を率い江戸に攻め来る西郷隆盛の和平に向けた会談のシーン。
言葉と言葉、相手の心の読みあいによる戦いは、合戦のような荒々しさこそ無いものの、手に汗握る迫真の場面となっています。

この作品で描かれる勝海舟が、これまた格好いいんだ。
将軍によるあらゆる無茶振りに呆れつつ怒りつつしながらも、日本という国に到来するべき次の時代に向けて、命懸けで突き進む一人の男。
その生き様が良い。
そんな彼の周囲に集まる人物達もまた、それぞれ個性的で格好いい。
幕末という混迷を極めた時代に、彼のような麒麟児が居なければ、この国はいったいどうなっていたのだろう。
そんな事を考えさせられる作品でもありました。

普段歴史小説を読まない方(僕もですが)にも、十分わかりやすい本作。
歴史小説を読んでみたい!熱い男の物語が読みたい!冲方作品が気になる!なんて人にオススメです。

精霊の守り人   –  上橋菜穂子

おもしろ度:★★★+0.5 おすすめ度:★★★

老練な女用心棒バルサは、新ヨゴ皇国の二ノ妃から皇子チャグムを託される。精霊の卵を宿した息子を疎み、父帝が差し向けてくる刺客や、異界の魔物から幼いチャグムを守るため、バルサは身体を張って戦い続ける。建国神話の秘密、先住民の伝承など文化人類学者らしい緻密な世界構築が評判を呼び、数多くの受賞歴を誇るロングセラーがついに文庫化。痛快で新しい冒険シリーズが今始まる。

新潮社HPより)

少し前にNHKにてドラマ化もされていた作品。
和製ファンタジーを読みたい欲を満たすため、今回読んでみました。

大人気シリーズとして今作以降も巻数を重ねている物語とあって、安定した面白さがありました。

個人的に意外だったのが、この作品が児童文学として書かれたという点。
作者曰く「子どもが読んでも、大人が読んでも面白い物語を書きたいから」と言うのが、その理由であるそう。
事実、今作はロングセラー作品であり、老若男女問わず幅広く読まれているそうです。

私自身はあまり児童文学に明るくないのですが、それでも児童文学と言われて真っ先に思い浮かべるのは、J・K・ローリングの『ハリー・ポッター』やミヒャエル・エンデの『モモ』、サン=テグジュペリの『星の王子さま』など。
これらの作品は子ども達だけでなく、大人からも絶大な支持を集めています。
良質な物語と言うものは、世代を問わず人々の心を惹きつける。
この『精霊の守り人』という作品もまた、多くの人々の心に何かを訴えかける物語の一つと言えるのだと思います。

『守り人シリーズ』の起点ともなる今作で語られる物語は、壮大でありながら上手く一冊の本にまとめ上げられていて、非常に巧みだと思いました。
良い意味で過不足のない物語と言うんでしょうか。
描くべき場面は描き、しかし物語上の時間軸を思いっきり飛ばす場所は飛ばす。
それでいて物語がチグハグになってしまうこともない、素晴らしいテンポの良い作品となっています。

間違いなく大人から子どもまで、多くの人が楽しめる作品です。

宇宙消失   –  グレッグ・イーガン

おもしろ度:★★★★ おすすめ度:★★★

2034年、地球の夜空から一夜にして星々が消えた。正体不明の暗黒の球体が太陽系を包み込んだのだ。世界を恐慌が襲い、球体についてさまざまな仮説が乱れ飛ぶが、決着を見ないまま33年が過ぎた……。ある日、元警官ニックは、病院から消えた女性の捜索依頼を受ける。だがそれが、人類を震撼させる真実につながろうとは! ナノテクと量子論が織りなす、戦慄のハードSF。著者の記念すべきデビュー長編。

東京創元社HPより)

オーストラリアのSF小説作家、グレッグ・イーガンの作品。

ナノテクと言えば昨今のSF界ではすっかりお馴染みのギミックとなっていますが、これらのギミック/ガジェットの理屈について「これでもか!」というほど細々と設定が練られている辺り、さすがと言わざるを得ません。

また、この作品のキーとなるのは量子論における波動関数の収束。

ナノテクと合わせて、量子論もSF界では超がつくほど大人気なファクターですが(シュレディンガーの猫とか皆好きすぎだよね)、綿密な設定のもとに成り立つナノテク技術が世界観を構築し、その世界観上で量子論そのものを題材に展開する巧な物語は、他ではなかなか見ることができません。

量子論波動関数と言うと何だか難解そうで近寄りがたい雰囲気ですが、その辺りは比較的わかりやすく説明がなされています。
かく言う私も、量子論なんて雰囲気でしか理解できていません笑
が、じっくり読んでいけば、少なからず本作の物語を楽しむぶんには、問題なくこれらの要素を理解することが可能でしょう(分からなかったら分からなかったで雰囲気で読み進めても問題ないと思います笑)。

小難しさに少々辟易してしまうこともあるかもしれませんが、それでも読み進めていった先で主人公ニックが辿り着く結末は、まさに衝撃的です。

本作の原語版が発表されてから既に30年近く経過していますが、当時と比べてあらゆる科学技術が発達した現在においても、全く色あせる事のないハードSF作品。

グレッグ・イーガンが好きな人や興味がある人はもちろんのこと、ハードSFを読んでみたい!という人にも、オススメできる作品です。

個人的感想はコチラ

面白かったのだけど、結末で都市がああなった理由がいまいちピンときていません。

あまり深く考えず、「なってしまったのだから、なってしまったのだ」という事なのか?

それとも、作中ラストで起こったようなトンデモない事をしでかした連中なんて滅ぼして当然だ!的な人類の総意として固有状態が選択されたと解釈するべきなんでしょうか。

あるいは、ああした都市の結末自体が、「読者によって選択された固有状態なのだ」とも捉えられる気がします。

ひょっとして、量子論をしっかり理解している人には、都市崩壊の理由がわかったりするんでしょうか。

読者はイーガン氏の作品によって拡散され、また同時に作品を読むことで物語の収縮を迫られているのかもしれません。
サイコロを振ろう。

マルドゥック・アノニマス4   –  冲方 丁

おもしろ度:★★★★+0.5 おすすめ度:★★

オフィスとクインテットの死闘の末、両陣営は多数負傷者を出し、ウフコックはハンターに拉致されてしまう。何も知らずに友人たちとの卒業旅行から帰ったバロットは、イースターからこれまでの経緯を聞き、ウフコックの奪還を決意する。善なる協力者たち、大学での新たな学び、そして楽園――考えうるすべての方法を使って。あの日、ネズミの良心に救われた少女はいつしか二十歳に近づいていた。二人の物語が再び動き出す

ハヤカワ・オンラインより)

こちらは上の方で紹介した『麒麟児』の作者によるSF作品です。

2003年に刊行された同氏による『マルドゥック・スクランブル』から始まるマルドゥックシリーズの最新刊。
なにせ15年以上にわたるシリーズの最新作なので、迂闊に「おすすめです!」とか言えない点が惜しいですが、この作品が良質なSFアクション小説であることは間違いありません。

アノニマスシリーズ中でも、この第4巻が個人的には一番面白かった。

この作品については過去に記事を書いているので、ここで改めてアレコレ書くのはやめておきます笑

マルドゥック・アノニマス4についての記事はコチラ

 

ビット・プレイヤー   –  グレッグ・イーガン

おもしろ度:★★★+0.5 おすすめ度:★★★

重力が変化した世界で目覚めた主人公を待っていたものを描く表題作など全6篇収録、ハードSFの雄イーガンの日本オリジナル短篇集

ハヤカワ・オンラインより)

またもやグレッグ・イーガンです。

宇宙消失がちょっと古めの作品でしたが、こちらは日本オリジナル短編小説として発刊したてです。
収録されている6篇の短編はどれもバラエティに富んでいて、一冊で様々な物語が楽しめます。

中でも個人的に気に入ったのは、現時点で作者唯一となるタイムトラベルもの『失われた大陸』と、作者による長篇作品『白熱光』と同世界観における過去の物語となる『鰐乗り』

前者は内戦と難民の問題について語られています。
物語の舞台自体は私たちの世界とは別時空(パラレルワールドと言えば良いのかな?)であるのだけど、私たちにとっても決して無視する事は出来ない内容となっており、いろいろ考えさせられます。
決して楽観できる事ではないけれど、それでも最後に描かれた小さな希望には、胸に迫るものがありました。

後者の『鰐乗り』は、現在から数百万年後の、宇宙を舞台にした物語。
昨年、小説『ディアスポラ』を読んで見事グレッグ・イーガンの虜となった私にとって、人間のデータ化恒星間旅行飽くなき未知の探求といった要素が非常にハマりました。
例によって例のごとくギミックの説明の辺りは若干「???」となった点もありましたが、主人公夫婦が広大なスケールで繰り広げる知の冒険には、心躍りました。

SF好きはもちろんの事、いきなり長篇作品を読むのは辛いけどグレッグ・イーガンが気になるし……、と言った方にオススメできます。

おわりに

と言うことで、2019年上半期に読んだ小説の紹介でした。

なんだかやたらと長い乱文となってしまって、個々の作品の良さについてどれほどお伝えできたか非常に怪しい感じになりました笑

それでも、少しでもこれらの作品に興味を抱いて頂けたなら幸いです。

ではでは、ここまで読んで下さり、ありがとうございました!

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